遺言書
ここ数年「終活」が話題となり、遺言書を作成する方は増えています。
平成30年度に全国で作成された公正証書遺言の件数は、約11万件となっています。
一方で、財産の分け方で話し合いがまとまらず、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件の件数も増加しています。
相続が起きたとき、最も悲しいことは、ご自身が残した遺産をめぐって残されたご家族が争うことです。
一度相続で争いになった関係は、その後修復されることは極めて困難です。
遺言書を作成することにより、遺産は誰にどのように分配したいのか、ご自身の意思を明確にすることができます。
あなたがどのように考えていたか、その意思が分かれば残された家族の争いを未然に防ぐことにつながるのです。
1.遺言書に対する誤解
(こんな誤解をしていませんか?)
「遺言書をつくるのは金持ちだけでいい。」
「法律通りに財産を分ければ問題ないはずだ。」
「わが家は家族仲がいいから相続トラブルは起きない。」
「財産を残すつもりはないから遺言書は不要。」
「遺言書をつくるのはもっと年取ってからでいい。」
「遺言書を作ったら自分の財産が使えなくなる。」
「遺言書を書くなんて縁起悪い。」
こんな誤解が相続トラブルを招いている原因の一つになっています。
「相続」を「争族」にしないためにも、遺言書を作成されることをお勧めします。
2.遺言書の種類
遺言書には方式により、いくつか種類がありますが、一般的には自筆証書遺言と公正証書遺言がよく使われています。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いと特徴は、下記のとおりです。
種類 | 作成者 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
自筆証書遺言 | 本人 |
@手軽に作成できる |
@要件を満たさず、無効になることがある |
公正証書遺言 | 公証人 |
@法律のプロが作成するため、信頼できる |
@作成に多少手間がかかる |
3.こんな人は遺言書をつくることをおすすめします
(あなたは該当しませんか)
〇用語のご説明
・被相続人・・亡くなった人のこと
・相続人 ・・相続を受ける人のこと
@法定相続分どおりに相続させたくない人
残された家族には決められた財産の取り分(法定相続分)があります。
強制力がないとはいえ、通常はその割合を念頭において遺産分割することになります。
しかしあなたが「子どもはいるけど、配偶者にすべてを相続させたい」などと法定相続分と異なる分け方を希望する場合は遺言書を作る必要があります。
Aおひとり様
配偶者がおらず、親が先に死亡している場合、兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子)が相続人になります。
兄弟の人数が多い、又は異母兄弟・異父兄弟がいる場合は、相続人の関係も複雑になります。
遺言書がなければ、相続人全員が話し合い、財産の分け方を決めることになりますが、人数が多ければ多いほど、話し合いが難航します。
遺言書を書いておけば、自分の希望通りに財産を分配することが可能です。
B子どものいない夫婦
夫婦の一方が死亡した場合、残された配偶者だけでなく、被相続人の親や兄弟姉妹がいる場合は、その方たちも相続人になります。
被相続人の親はすでに死亡しているが、兄弟は健在という場合、相続財産に対して、配偶者が4分の3、兄弟が4分の1という割合で権利を有することになります。
夫婦で築いてきた財産を、兄弟姉妹にも分けなければならなくなる可能性があります。
また、預貯金の解約や不動産の名義変更等の相続手続を行うには、全ての相続人の実印や印鑑証明書が必要になります。
遺言書を書いておけば、全ての財産を配偶者に相続させることも可能です。
C内縁関係の夫婦
内縁関係の夫婦とは、婚姻届が出されていない事実上の夫婦のことです。
長年生活を共にし、夫婦同様の生活をしてきたとしても互いに相続権はありません。
遺言書を書いておけば、内縁の妻(内縁の夫)に財産を残すことができます。
D離婚、再婚をするなど家族関係が複雑な人
「離婚をしたらもう前の家族は関係ない」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、前婚で子供をもうけている場合は無関係というわけにはいきません。
前妻(前夫)の子どもと後妻(後夫)とは、関係が良くない場合も多く、遺産分割協議の難航が予想されます。
遺言書を書いておけば、遺産分割協議をする必要もなく、スムーズに相続をすすめることが可能です。
E行方不明の推定相続人がいる人
行方不明で連絡が取れない相続人がいる場合、預貯金の解約ができず残された家族が生活に困る可能性があります。
連絡が取れないからといって、その方を無視することはできません。
遺言書を書いておけば、遺産分割協議をする必要がありませんので、行方不明者と連絡が取れなくても預貯金の解約もスムーズにできます。
F相続人以外の人に財産をあげたい人
通常、代襲相続の場合を除くと、孫や嫁、娘婿、舅、姑、いとこ、甥、姪などには相続権はありません。
死後、彼らに財産をあげたいと思うなら、遺言書が必要となります。
遺言書を書いておけば、世話になった人達へ財産を残し、感謝の気持ちを伝えることができます。
G相続人がいない人
相続人がおらず、特別縁故者もいない場合、遺産は国のものになってしまいます。
遺言書を書いておけば、生前お世話になった人や自分が選んだ団体に財産を残すことができます。
H自宅で子供と同居しており、他に同居していない子供もいる人
親の所有している土地や建物も相続財産になるため、同居していた子供が住み続けることができなくなることもあります。
しかし、遺言書を書いておけば、同居している子供がそのまま住み続けることも可能となります。
I気がかりな家族がいる人
病気や障害のある家族のことが心配な人は、彼らが確実に財産を相続できるように遺言したり、彼らの面倒を見てもらうことを条件に、信頼できる人に財産の一部をあげるように遺言する(これを「負担付き遺贈」といいます)こともできます。
J残されるペットの 行く末が心配な人
自分の死後、大切なペットの世話が心配だという人は、家族や友人、ペット業者などにペットの世話をしてもらう代わりにお金を遺贈するという内容の遺言書をつくることが考えられます。
これも「負担付き遺贈」です。
当事務所は、皆様が遺言書を作成される場合の相談、文案の作成、必要書類の収集等から、公正証書で作成される場合の公証人との連絡調整、証人への就任もお手伝いさせていただいております。
また、遺言執行者に指定いただいた場合、遺言者が亡くなられた後に、遺言書の内容を実現する遺言執行をさせていただくことも可能です。
[費用の目安(税別)]
自筆証書遺言 起案・作成指導 50,000円〜
公正証書遺言 起案・作成指導100,000円〜
証人就任(1名あたり) 10,000円
遺言執行報酬 300,000円〜
行政書士長谷部事務所
横浜市港南区港南台7丁目44番25号
TEL 045−353−7789