尊厳死宣言書
もし、あなたが事故や病気で回復の見込みがない脳死状態になったら「どんな手立てを講じてもいいから、1分、1秒でも長く生かして欲しい」と思うでしょうか。
それとも、苦痛を緩和する以外は医学的な措置を施さず、自然な死を迎えたいと願うでしょうか。
答えはもちろん人それぞれだと思います。
しかし最近は、過剰な延命措置に疑問を抱き、「尊厳死」(延命措置を差し控えたり中止したりして自然な死を迎えること)を望む人が増えています。
しかし、本人にそのような希望があっても、何の準備もしていなければ、実際にそのような状態になったときに、その希望を叶えるのは難しいのが現状です。
本人はもう意思表示できませんし、家族はもし本人の意思を知っていても迷うはずです。たとえ家族が本人の意思を医療機関に伝えても、医師が法的責任を問われるのを恐れて消極的になる可能性もあります。
尊厳死を望むなら最低限、その意思を客観的な形で残す必要があります。その意思を書面で宣言したものが、「尊厳死宣言書」といいます。
自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置はしてほしくない、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えたいという意思を表示するための宣言書です。
自分らしく生きたいと同じく、自分らしく死にたいという意思表示であるといえます。
尊厳死宣言書 (例)
私は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている
場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に、
以下の要望を宣言します。
1.私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り、既に死期が迫っている
と診断された場合には、いたずらに死期を延ばすためだけの延命措置は
一切行わないでください。
2.ただし、この場合、私の苦痛を和らげる処置は最大限に実施してください。
そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしても一向に
かまいません。
3.私に第1条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、
私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮
ください。
・・・・・・・(※以下省略)
現在、日本では尊厳死についての法律がないため、そのような文書があっても確実に実現される保証はありません。
とはいえ、日本尊厳死協会の調査によると、実際に末期状態になって「リビング・ウイル」(終末期医療についての意思表示を書面ですること)を提示した際に、9割以上の医療関係者が本人の希望を受け入れたことから、実現の可能性は高いと考えられています。
医療行為に関する判断は本人しかできません。
しかし、現実の社会では本人に意識がなく意思表示ができない場合、医師は家族に意見を聞き、手術の同意や延命の判断を求めます。
よって、尊厳死を実現するには、医師と家族両方の協力が不可欠です。
家族間で意見の対立があっては困りますので、あらかじめご家族の了承を得ておかれることをお勧めいたします。
なお、遺言書に、尊厳死宣言を記載するのは不適切といえます。
なぜなら、遺言書は死後の事項に関することを書くものであり、死亡後に効力を発揮するものだからです。
「尊厳死宣言書」の書き方は法律で決まっているわけではありませんが、本人の意思を明確にして後日のトラブルを防止するために、公正証書でつくるのが望ましいといえます。
[費用の目安(税別)]
尊厳死宣言書 作成サポート 30,000円〜
行政書士長谷部事務所
横浜市港南区港南台7丁目44番25号
TEL 045−353−7789